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ペン先のハナシ [☆☆☆お仕事☆☆☆]

遠出して、徒歩1時間ほどのいくつか先の駅の方までいくと
滅多に客がこなさそうな店を中心に古くて小さい文房具店が
いくつかあるんで、桜散策しつつ見て回りました。
そういうところって、消しゴムと鉛筆とのし袋とか封筒くらいしか
置いてないんだけど、数年前にJISマークのついたペン先の売れ残りが
発見されたりするので、あなどれなかったりする・・・・。

JISマーク・・・ご存知だろうか?品質保証された商品にだけ刻印が
許されるものだったのですが、20年くらい前?もっと前なのかな・・・?
これが廃止されてしまいまして、ペン先の品質が一度ガクっと落ちた事がありました。
デジタルなんて頭にもなかった当時の業界は、もちろん騒然となり
もう、つけペンで漫画描けなくなるの?という不安も耳にしました。
極端な男性漫画家が、なくなったら漫画辞める・・みたいな話もしてたなんて
都市伝説的な話も伝わりました。

当時は私、学生で完全に読者側にいたので「そんなすごい事なんだな~」と
沿岸の火事のように傍観していたのです。
だって、趣味で描く程度なんかに品質が解るはずもないですからね。

が、やがて自分が業界に入りペン先というものが1本140円とかするのに
ガンガン使い捨てていくものだと知り・・・画材負担を自分でしないといけない
アシスタント先なんかでは、一回の仕事に30本とか消費するので
かなり痛い出費になっていました。
(今、思えば消耗品をアシスタントが負担するアシスタント先なんてありえませんが)

ペン先には再び危機が訪れます。
10年ほど前でしょうか?
ゼブラという有名メイカーでペン先を作っていた職人さんが定年で退社されたようで、
後継者が居ずに、これまたひどい品質になりさがったのです。
私を含めた漫画家さんたちは、みんな消費が激しいのでペン先は
グロス買い・・という144本入った箱買いする人が多いのですが
私も1グロス買うと、50本は最初から先が開いていたり、曲がっていて
細い線が描けないという事態に!!( ̄□ ̄;)!!

これには周囲も困り果てて、ゼブラにクレームをつけていましたが
どうも需要の少ないペン先事業に力を入れるつもりがないようなので
品質が上がる事は期待できないという事のようでした。
私の知り合いの先生は不良品を交換してもらう為に
クレームを出して商品交換してもらったのですが、その交換してもらった
商品が、これまた同じように半分以上不良品。
それにもクレームつけると同じような不良品の半分以上混ざった商品で
代用してくるだけなので、虚しくなり全部捨てて忘れることにしたそうです(^_^;)
私も未だに不良品を50本ほど抱えていますが、これを聞いて問い合わせすら
バカバカしくなってしまいやめてしまいました。
あげくの果てに、ゼブラはグロス売りを止めてしまい10本売りしか
しないようになっていってしまいました。

私は、この姿勢にあきれてゼブラという会社自体の信頼度を
完全になくしてしまったので、ペン先をすべて違うメーカーの商品に
替えることにしました。
・・・・・・・・・ところが慣れるまでは、ペン先もひっかかるし
なかなかキレイな線がひけません(>_<)
ペン先に慣れる事自体が実は難しくて、かなりの量を描かないと
慣れないので、必死です。久しぶりにこんな苦労したよ・・・

・・・・・・・・でも、まあなんとか慣れてきて使える様にもなり
今ではタチカワ・日光(今ではどっちも吸収合併かなにかで同じ会社になった)の
ペン先を使って描いています。
・・・・・・・・・こういうアナログな画材ってそのうちなくなっちゃうのかな(・_・;)
ぜひとも頑張って作り続けて欲しいものです。

そしてさらに・・・・去年・・・・ペン先の中でも私には重要な「丸ペン」という
細い線を描くためのペン先の素材がクロームに変更になってしまいました・・・。
やっと慣れたところなのに・・・

このクローム。細く描けるのはいいんだけど、素材が硬く先が開きにくいので
紙にひっかかりやすくて、湿気が60%あると一気に描きにくくなる。
筆圧の強い私みたいなタッチだと、紙をペン先で掘って描くので
インクが細かく飛び散ったりして、画面が汚れるのだ・・・
筆圧弱めて描くと、今度は消しゴムかけると線が薄くなってしまい
印刷に出なくなるので汚くなる・・・・・・・・・
そして、効果線のような強弱のあるものを描こうとすると描きにくい…
なので、新たに日本字ペンというペン先を導入…

画材の中に、スクリーントーンという効果を印刷された透明なフィルムがあるのですが
モノクロで描く漫画の世界ではこれを貼って『色』を表現するのですが
これがデジタル化によって売れ行きが落ちているため
新商品も最近はめぼしいものが出ず(以前は年に2回新柄が10種くらい出ていた)
柄も出尽くしたようなカンジもあるんですけどね・・・

アナログで描くデメリットが目立ち始めている今日この頃です。

世の中デジタル化が進むのね・・・確かにデジタルにすれば一度高価なソフトを
購入すればトーンの在庫も必要なくなるし(かなりの負担になる。経済的にも場所的にも)
金銭的にもかなりの負担が減るし、覚えてしまえば一番かかる人件費もガッツリ減らせて
そして何よりも時間短縮となる・・・・と聞くとデジタル化を夢見てしまう。
私のように一人でも何とか出来るタイプは余計にそう感じるんですけど・・・

いかんせん絵柄がデジタルに向かないのね・・・
線の細さもデジタルでは拾いきれないし・・・再現できない。
印刷所にあるような高性能高画質で大きいサイズが取り込めるスキャナーでも
あれば別なんだろうケド、これを導入するとなると・・・
この先死ぬまで描いたとしても元が取れないほど高額だしね(・_・;)

なので地道に今ある材料でアナログ作業をコツコツやっていくしかないのよね…
アナログ描きなんてそのうち年寄り作家ばかりになるんだろうなあ・・・

今は描き始めたばかりの子がソフト使って、絵が全く描けなくても
プロ並みの画面が作れてしまう時代だしね。
で、今の世代の若い読者層は「個性」なんて必要ないから
同じような絵でいい訳だし・・・・
絵柄や画面に関しては問題がなくなるので、あとはストーリーだけって
事になるんだろうね。
これもそのうち解消されちゃうのかしら・・・・





























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