SSブログ

アイヌ神謡集 [☆☆☆お仕事☆☆☆]


鬼首殺人事件 (祥伝社文庫)

鬼首殺人事件 (祥伝社文庫)

  • 作者: 内田 康夫
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2009/07/24
  • メディア: 文庫



私は作品を描く前に色々と調べてから描くようにしています。
舞台となる土地を徹底的に調べたり、主人公の仕事を調べたり…
散々調べても画面上、絵なので美術的配慮やハデさを優先させて
まったく違うモノを描いたりする場合もあるんですが(・_・;)
いや、コレは非常に多いケースなのかも。
でも、絵的には「実際にはここにはないけど、画面上ハデだから…これをあえて描く」は
どの作家さんもかなりの比率でやっている事だと思う。
私レベルでもそれは同じ。
でも、基本的には徹底して下調べをして準備して作品に挑むことにしています。

外国が舞台となる作品だとなおさらそれは重要なんですが、
国内でも同じことで・・・・
日本といっても広くて土地柄によって色々と変わっているし
風土が違う以上色々と描き方も違ってきてしまうのですね。

発売日が決定したので、もう発表してもいいかな?
2月26日発売で浅見光彦シリーズの新作が発売されます。
作品は『鬼首殺人事件』舞台は秋田で、小野小町の出身地である
雄勝町が舞台になっています。

原作が決まると、内田康夫先生が取材して舞台にした場所や
モデルにした建物などを徹底的に調べて、なるべく原作のイメージに
近づけようと思います。
しかし・・・これだけネットが普及してもなかなか資料が整いません(/_;)
取材にいければいいけど・・・漫画は小説やドラマと違って
取材費も制作費も全部原稿料から捻出しないといけないので
取材にしたら赤字が増えてしまうだけで、とてもではないけど
仕事にならないので、ネットで徹底して調べています。
ホント、ネットがあって良かったと思いますよ・・・
前はなかったので本を調べて(しかも自分の足で)資料代だけでも
キツい出費をしないといけませんでしたから・・・

今回の「鬼首」の鬼とは、蝦夷(エゾ・エミシ)といって、東北地方に住む
原住民・・・アイヌ民族の流れの人たちの事を指します。
私は文化の保存を願うのでアイヌ民族には思いいれもあったりするし
今尚差別を受けて不遇の境遇にあることに、ものすごい憤りを感じます。
中学生だったかな・・・国語の教科書にアイヌ民族の詩が
載っていて、その感性の豊かさや文化の深さを知って
これを差別していた時代の人たちの、愚かさには怒りを覚えずにはいられません。

アメリカのインディアンとかアイヌ民族のように自然の中の一部として
狩猟をして生きていて、刺青や化粧などの独特の文化を持っているのですが
これがものすごく美しい。
自然と共にあるべき人間が自然界の一部にしか過ぎないという事を
思い知らされてしまう事でもあるのです。
文字を持たない文化をさげすんだりしてしまうのは何ででしょうね。
口伝には口伝の意味があるんだと思う。

私は文化というものに対して、異文化の人間が自分の勝手な価値観で
それを否定するのは傲慢だと思うのですが、悲しい事に
他人を否定する人って、自分の傲慢さに気がついてないし
正義感だと思い込んでいる。
どれだけ傲慢で自分本位なのか解ってない。
こういう人たちが、インディアンやアイヌ民族から土地を奪い
言語を奪い、文化を消滅に追い込んでいってしまうんですよね。

蔑まれた歴史が長くなると、アイヌの人たちは自分たちがアイヌだと隠して
血を薄めていこうとして、和人たちとの婚姻関係をすすめていって
年々人数は減少しつつあるのです。
それは仕方のないことですし、時代の流れで止めようにもない事ですが
文化は残して欲しいなあ思ってしまうのです。
アイヌ民族の衣装は独特で、とってもキレイ。
刺青をほどこした顔や腕は芸術品みたいだし。
ホント、インディアンの部族と同じで独特の価値観で
作り上げた文化は時代と共に風化してしまうのが本当に惜しいです。

アイヌ民族は文字を持たないので、口伝でたくさんの神様への
謡を伝えています。それは「ユーカラ」と呼ばれていて
自然の中の一部として生きて行く意味を謡っているのです。
なんだろう…宗教じゃないな・・・信仰に近いのかな?
動物が神様というか…神様が色々な生き物に宿っているというか。
それを金田一京助先生は、当時からすばらしい文化で
恥じることでもないんだと説得して、一冊の本に翻訳して
まとめたのですが、この口伝のユーカラを伝えてくれた少女は
19歳で本の完成と共に亡くなってしまうのです。

脱線しましたが、このアイヌ民族の流れでもある蝦夷の長、アテルイは
坂上田村麻呂に征伐されてしまい、そのアテルイの軍勢の首を大量に
切った場所が、この今回の舞台の「鬼首(おにこうべ)」となった訳です。

そんな訳で悲しい歴史を生んだ地で、浅見光彦が
さらなる悲しい過去の犯罪に取り組んでいく今回の事件は
自分で希望を出して描きたいと言ったのですが・・・
あまりにも辛いシーンが多くて精神的ダメージが大きくて
なかなか絵を描くのがキツかったです。

私はナイーブでもないし、そんなにヤワでもないのですが
さすがに殺人シーン描くとなるとペースがガクっと落ちていくので
こんな私でも一応はダメージくらっているみたい。

でもね、私はちゃんと作品には向き合いたいので逃げたりしないで
ちゃんと描ききったつもりです。
そりゃ…画力とか表現力が乏しいと言われたらそれまでですが
私の精一杯と全力は毎回注いでいるので、それを感じてもらえると嬉しいな。

※通常的にはインディアンを「ネイティブアメリカン」と言う様になっているみたいですが
私の好きなインディアンの人権活動家(俳優もやっている)の方が
自分はインディアンであってネイティブアメリカンなんかじゃないと
訴えているので、私はあえてインディアンと表記しました。
その方は去年10月に亡くなってしまいました。
ご冥福をお祈りいたします。


アイヌ神謡集 (岩波文庫)

アイヌ神謡集 (岩波文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1978/08/16
  • メディア: 文庫



銀のしずく降る降るまわりに―知里幸恵の生涯

銀のしずく降る降るまわりに―知里幸恵の生涯

  • 作者: 藤本 英夫
  • 出版社/メーカー: 草風館
  • 発売日: 1991/06
  • メディア: 単行本


nice!(4) 
共通テーマ:コミック

nice! 4

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。